租界と租借地はどう違うのか

租界と租借地はどちらも外国が行政権を持っている点で共通していますが、いくつか違う点があります。租界の行政は(総)領事や「工部局」と呼ばれる行政機関が担っていましたが、租借地は租借国、つまりは土地を借りている国が任命した総督などが行政のトップとなっていました。面積についていえば、租借地は基本的に租界よりも大きく、租界の存在は経済的な意味合いが強いのに対して、租借地は軍事的戦略性が強いと言えます。租界に関しては、借りている国が中国側に「地税」を支払うのに対し、租借地は支払う必要はなかったようです。司法の面でも違いがあり、例えば中国人が租界内で犯罪を犯した場合、中国の裁判所で中国の法律によって裁かれるのに対し、租借地では、租借地の法律が適用されました。司法のほか、関税についても複雑ではありますがもう少し調べてみる必要がありそうです。戦争が勃発した際、租界は中立区としてみなされるのに対して、租借地は中立区とはみなされないようです。例えば、第一次世界大戦においては、日本は日英同盟を理由にドイツに宣戦布告し、ドイツの膠州湾租借地を占領しました。旅順・大連の租借地に「中立地帯」という地域が隣接していて、ここは中国側が行政権を持っているものの、中国軍が入ることはできない場所でした。衝突を防ぐことが目的であったと考えられます。また、中国がドイツ、オーストリアに宣戦布告(1917年)した後は、ドイツ租界とオーストリア租界を回収しています。また、ロシア革命の勃発後、中国はロシア租界を回収しています。

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参考文献

植田捷雄「支那租界論 増補版」、巌松堂書店、1939年。

植田捷雄「在支列国権益概説」、巌松堂書店、1939年。

張洪祥著「近代中国通商口岸与租界」天津人民出版社、1993年。